経済産業省は、電気事業における市場リスクの高まりを受けて「電力先物の活性化に向けた検討会」を開催し、ヘッジツールとしての電力先物の課題や今後の方向性をとりまとめた。これに続いて経済産業省・東京商品取引所は「電力先物におけるヘッジ会計適用に向けた検討会」を開催し、電力先物を活用するうえでの実務上の課題であるヘッジ会計適用について指針を整理した。また、同取引所では、電力の週間物・年度物やLNG先物など上場商品の充実が進められ、信用力のある金融機関や海外トレーダーの参加も進んで、電力先物の取引量は着実に増加している。
本発表では、前半に、電力先物・LNG先物を用いたスパーク・スプレッド取引の最適化(※1)について報告する。わが国の発電事業者がスパーク・スプレッド取引を行う際には、パイプラインでガス取引が行われる欧米と異なり、LNG船のサイズごとにしか追加調達や転売はできない。そこで、LNG船サイズ、タンク容量、各発電ユニット、等の運用制約の下でスプレッド取引の利益を最大化する最適化問題を定式化し、実際の制約に近い条件で試算を行った。
後半では、発表者が委員として参加した「電力先物におけるヘッジ会計適用に向けた検討会」報告書(※2)について、そのポイントを解説する。
※1)Endo(2024), Optimization of electricity futures and LNG futures trading under practical constraints of power producers in Japan, JSIAM Letters, Vol.16, pp.41-44.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsiaml/16/0/16_41/_article
※2)経済産業省・東京商品取引所(2025), 電力先物におけるヘッジ会計適用に関する報告書.
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/hedge_accounting/20250206_report.html |