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日本リアルオプション学会

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第2回公開研究会

 日時 2006年6月20日(火) 14:00 - 16:30

 場所 早稲田大学 大学院 ファイナンス研究科 教室8,9

 参加人数 約50名

1. 知的財産の価値評価
鈴木 公明 東京理科大学 助教授

知的財産とりわけ特許権の価値評価については、現在までに様々な手法が提案・実行されているが、特許権が保護する事業が生み出すキャッシュを生み出している場合には、DCF法を用いることが想定される。また、すでに、ブラックショールズ方程式を直接利用して、技術の価値を評価するビジネスも展開されている。一方で、特許権の保有が、「研究開発事業への投資機会の価値」を生み出す背景となる場合もあり、特許権とリアルオプションとの関係は密接である。さらに、特許権を得ようとして特許出願する行為自体、将来もたらされる独占収益に対するコールオプションの購入と見ることができるなど、特許制度に内在する固有のオプションも存在する。知的財産の価値に対するオプション理論によるアプローチについては、理論的探求の更なる進化が望まれる。

2. インフラ経営における事業評価制度のリアルオプション価値
長谷川 専 (株) 三菱総合研究所 主任研究員

インフラ整備事業は、費用便益分析に基づく公共事業評価制度によって、事前評価で投資、棄却、(延期)が判断され、再評価で継続、休止、再開、休止継続、中止が判断される。公共事業評価制度は平成10年度に導入されたが、平成13年に建設省、運輸省等が国土交通省として統合された際に、休止(再評価)が廃止された。本研究では、事業評価制度の導入および休止廃止がインフラ整備事業の社会経済的価値に与えた影響を計測するモデルを構築した。モデルの特徴は、幾何ブラウン過程など予め特定の確率過程を仮定せず、マルコフ過程のみを仮定した条件付確率で表すことにより、第二種フレドホルム積分方程式として記述した点にある。仮想的な道路事業におけるケーススタディ(ボラティリティσ=0.5のケース)によれば、平成10年度の公共事業評価制度の導入により事業価値は約113%増加し、平成13年の再評価における休止廃止により約82%減少したという結果が得られた。この結果から、再評価における休止の再導入を図ることが望ましいとの結論を得た。

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知的財産の価値評価

インフラ経営における事業評価制度のリアルオプション価値

第1回公開研究会

 日時 2006年5月 19 日(金) 14:00 - 16:30

 場所 早稲田大学 大学院 ファイナンス研究科 ホール

 参加人数 約60名

 リアルオプションと事業価値について

1. リアルオプションとゲーム理論:コミットメントかオプションか
渡辺 隆裕 首都大学東京 社会科学研究科 経営学専攻 教授

リアルオプションとゲーム理論を融合し、競争状況と不確実性下での投資評価と経営戦略を導く基礎的なアイディアについて、2企業2時点モデルを中心に説明した。まず1企業2時点での簡単な投資モデルによって「意思決定の柔軟性が価値を持つ」「投資費用の減少や初期需要の増加によってオプション価値は単調増加する」というリアルオプションの基本的なアイディアを復習した。そのうえでこれを競争状況下の2企業の投資競争にこれを拡張することで「意思決定の柔軟性は必ずしも価値を持たず、コミットメントが価値を高めることがある」「投資費用の減少や初期需要の増加によってオプション価値は単調に増加せず、競争状況下ではその状況の僅かな変化によっても戦略や価値が大きく変化する可能性があること」という結果が示された。最後にこの基礎的概念を現実の投資評価に結びつけるための多期間モデルについて、簡単な紹介を行った。

2. 大規模インフラ事業におけるリアルオプションの活用
湊 隆幸 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 助教授

本講演は、大規模なインフラ事業を対象とし、そこで適用可能なリアルオプションを、投資、契約、事業の観点から分類した説明を行ったものである。 ここでの議論は、事例を交えた、実務への適用という視点からの議論を行ったものである。 投資オプションでは、東京湾横断道路の設計を例に、そこで導入された計画・実施案に含まれるオプションを紹介した。ここでは、また、インフラを構築する場合の価値評価について、費用便益分析に適用すべき分析の考えを説明した。契約オプションと事業オプションについては、PFI型のインフラ事業を対象に、政府補助をオプションとして捉える考え方を中心に解説および事例紹介を行った。さらに、不可逆性を考慮したPFIの有効性について、オプションに基づく考察を加えた。ここでの説明は、主に理論的な考察をベースにした。

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リアルオプションとゲーム理論:コミットメントかオプションか

大規模インフラ事業におけるリアルオプションの活用